私は、大学時代に20代で起業することを決めました。それは、海外留学で感じた異文化の刺激に触れ続ける機会を自ら作っていきたいという想い、また自校のサッカー応援で心揺さぶられ熱烈な趣味となったことから、場所と時間の制約がない仕事をしたいと思ったからです。当時一番の近道だと考えた中小企業診断士資格を取得し、コンサルタントとしての独立を目指すことにしました。
まずは、経営スキルとしてお金の勉強をしようと、新卒で地元兵庫県の信用金庫に就職しました。中核支店の営業活動をしながら、日々200件の伝票処理や窓口対応など幅広い業務をこなしていましたが、入社1年目は正直精神的にしんどいことも多くありました。「お金を扱う」という重い責任と厳しさ、絶対にミスが許されないという仕事が多くのしかかる中で、営業ノルマの達成もしなければならない。数値目標は店舗に張り出され、上司からのプレッシャーも大きく感じる中で、幅広い業務をこなしながらも、ノルマは達成し続けました。
サラリーマンとして働く一方で、稼ぐ力をつけるため独立に向けアフィリエイトの副業も始めていた私は、次のステップに進むためにも、信用金庫を退職し、フリ―ランスとして活動を始めました。2ヵ月ほどが経ち、個人で稼ぐことの難しさを痛感していた時に偶然参加した起業セミナーで診断士のようなポストがあると誘いを受け、兵庫県中小企業支援団体の事業立ち上げメンバーとして採用事業の構築に携わることにしました。内閣府が主導するプロ人材事業の立ち上げとして、兵庫県内の中小企業のさらなる成長を支援する一環として必要な専門人材の採用ができる基盤づくりをし、転職エージェントの営業代行のような活動も行っていました。商工会議所におけるセミナー開催の交渉や調整、県内の中小企業の会合に参加したり、経営者に人材採用要件を聞いて人材業者に要件を伝えるなど、100人ほどの経営者にお会いすることができました。
事業も軌道に乗ったタイミングで退職、診断士資格取得のため上京し、大学院に入学しました。順調に独立に向け歩んでいましたが、様々な業界で経験を積んできた方々と学ぶ中で、経験が少なく実績もこれからの自分が独立して、誰がビジネスを任せてくれるのだろうと悩む日々が続きました。卒業を目の前に大学の研究室にこもり悩んだ末、自分ができる分野かつ若い人が持つ特有のスキルで差別化できるのは『ネット広告』だと、的を絞り就職活動をしました。人生で一番自己分析に時間を充てたのではないかと思います。
卒業した27歳で、独立することを前提に就職したWebマーケティング会社で、当時上司(現副社長)となった岡田さんに出会いました。この出会いは組織として起業する大きな転換点になりました。職員時代から個人事業主としてWebメディア事業を展開してきた経験を活かしたプロジェクトが成功し、2人で実績を積み上げトップセールスに上り詰めました。長くの時間をともにし成果を上げてきた経験、また岡田さんが得意とするセール領域や販売領域の立案に、自分が得意な管理領域と経験を掛け合わせることで「組織」としてビジネスができると確信し、29歳の時に2人で株式会社グローバルマーケティングの設立に至りました。
ネット広告の経営者は「すごい営業マン」か「ネット広告運用のプロ」の2パターンが多いと思います。その中で、岡田さんは「すごい営業マン」として会社を支えてくれています。しかし、私はそのどちらでもない管理を得意とする社長として、主に管理領域を担当しています。社員が増えたことで、以前まで行っていた営業活動は減らし、会計や経理処理、採用・労務や制度設計などお金に関わるところから人事領域まで幅広く業務を行っています。
特に組織運営には注力し、価値観や基準作りを行っています。創業間もない時から取り入れた識学の考えをもとにしたルールや評価制度の構築や、理念や価値観にあった働き方の制度も整備しました。
ここで、社長がなぜお金の管理までしているのか疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、経営をする上でお金が回らないと会社を存続することが難しいのも事実です。必要となる銀行との交渉は信金の経験を活かし、このビジネス特有の資金繰りについても分かりやすいニュアンスで伝えることで話が早く進められるだけでなく、自身が会計を担当することで、厳しい時期もありましたがキャッシュが足りずに倒産するということも現在まで避けられています。
「目指していた20代での起業を達成する」など、自身がチャレンジしたいことを実現し形にしていくことにやりがいを感じます。最近では、組織運営の仕組みが形となり機能してきたなと思っています。
会社を拡大していくにあたり、岡田さんと2人でずっと現場に出て運営していくことに限界があると考えていたため、組織開発には早期から投資をしたいと考えていました。この私の「やりたい」を岡田さんは尊重してくれ、会社の運営や組織の方針などを任せてくれたこともあり、私たち役員を含む3名しかいない早期の段階から価値観の策定や評価制度やルールの構築などに投資することができました。そして現在の会社規模感に対しても評価制度や会社のルールなどが整備されたことで、社内に少しずつ階層もでき、細かく現場の動きに気を配る必要もなくなりました。時間に余裕ができたことで、より経営に必要な時間を確保できるようになった分、今後は各部署での責任者を育てていきながら、現場だけでも機能できる組織形態をつくっていきたいと考えています。
3年後まずは主軸事業であるデジタルマーケティングで売上30億円を目指します。
WEB広告代理店事業は競合がひしめくレッドオーシャンですが、市場規模としてまだまだ伸びていきます。そのため、プロフェッショナル人材を育てながら、お客様に真摯に誠実な対応を行っていけば、目標の売上も達成できると考えています。そして、ビジネス基盤を固めた上で、2022年に開始したヘアケアブランドのD2C事業も軌道に乗せていきたいです。
経営者の展望としては、事業領域に制限を設けず、売上をつくる仕組みを創り続けていきたいと考えています。これまで培ってきた「事業ノウハウや経営資源」と「メンバーの適正とビジョン」を掛け合わせて、更なる事業拡大をしていきたいと考えています。
主軸事業で盤石な基盤を作るために、自由の中で責任をもって行動できるプロフェッショナル集団として、お客様に的確で迅速な提案が行える体制が必要です。そのために、若手社員の成長の場(組織)となるため、組織運営での投資は続け、育成にもさらに取り組んでいきたいです。採用活動では、主に新卒採用に取り組み、育成目的とした有給のインターンシップを入社約半年前から内定者向けに実施しています。また、入社後は社会人としてのマナーや心得など基礎をつくるため外部コンサルタントの研修を約3ヵ月実施しています。創業2年目からこうした新人研修の基盤をつくったことで、早期から活躍する若手人材も増えてきました。社員が当社で得たスキル、経験、知識により、働き手として、入社時よりも高い価値でほかの会社に転職し、活躍できるような会社にしていきたいです。